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リフォーム・リノベーション

住み替えても暮らしは変えない。―長年の暮らしを受け継いだ、マンションリノベーション―

2026-07-27

ご相談いただいたのは、横浜市にお住まいの60代のご夫婦。

長年暮らしたマンション(スキップフロア型でエレベーターが止まらない住戸)から、
新築マンションへの住み替えを決められたタイミングでご相談をいただきました。

きっかけは、お嬢様と立ち寄ったモデルルーム。
「ここに住みたい」と購入を決めたものの、完成まで約1年ある中で、ふとこんな疑問が湧いてきたそうです。

「この家で、私たちはどう暮らせばいいんだろう。」

実は、お二人が悩んでいたのは間取りそのものではありませんでした。
長年使い続けてきた家具や、布団で眠る生活、毎日の暮らしのリズム。


長年住んだ住戸に不満があったわけではなく、むしろ愛着があったので、
「新しい住まいになっても、これまでの暮らしをなるべく変えたくない。」

そんな想いを胸に、

新築マンションだけどリフォームするか否か、
リフォームするならどこをどう変えたらいいのか、
ご主人はご自身で何枚もの間取りや家具の配置を考えられていました。



そんな折に、以前からのご縁を頼りに、私のもとへご相談くださいました。




答えは図面ではなく、価値観の中に

現役時代、エンジニアとして大規模プロジェクトをマネジメントしてこられたご主人は、とても論理的。
機能性を大切にし、ご自身で何枚もの間取り案を描かれていました。

ただ、何パターン図面を描いても納得できる落としどころがなかなか見つからない。

一方の奥様は、「明るい空間が好き」というような感覚を大切にされる方
ご主人様が提示する論点に対し、また違ったお話が返ってきたり。

お打ち合わせで印象的だったのは、ご夫婦それぞれのものの見方やこだわりポイントの違いでした。

普段は毎晩一緒にお酒を飲んだり、おいしいコーヒーやお菓子をシェアし合ったり
とっても仲睦まじいご夫婦なのですが、
住まいについて話し始めると、細かな部分で意見が嚙み合わないこともしばしばありました。



そこで私は、お二人の言葉やリフォームに関する技術的な情報を整理しつつ、じっくりと、お二人で話し合える場を整えるよう努めました。(後に、ご夫婦から何度も「小野さんが話し合いの場にいてくれて良かった」というお言葉を頂きました)



一歩ずつ答えを見つけていく中で私が何度もお聞きしたのは、「これからも残したいものや習慣は何ですか?」
という質問。

お気に入りの食器棚やダイニングテーブル。

毎晩の晩酌タイム。機能的なカップボード。寝室の明るい窓辺に置いたドレッサーでの毎朝のスキンケア時間。

持っていくもの、手放すもの、続けたい習慣をご夫婦で何度も話し合っていただきました。

私は図面を描いて設計もしていましたが、お二人の「これからの暮らし」をアシストしている感覚でした。




住み替えても、残したい習慣

そもそもご相談のきっかけになったのは、「布団をしまう押入れ」でした。

新居には和室がありません。限られたスペースを考えると、一度は「押入れは諦めた方がいいかもしれない」と考えました。

でも、お話を重ねるうちに気づいたのです。ご夫婦が残しいのは、押入れというより、布団で眠り、朝起きて布団をしまう。という長年続けてきた習慣=暮らし方だったのです。

そこで、既存の押入れ収納を移設するのではなく、
新居に合わせた造作家具としてご新居の寸法に合わせて新たにつくることになりました。

収納を設けた部屋はウォークスルークローゼットとし、お手持ちの箪笥や洋服も収まるよう計画。

可動棚の仕組みもご主人が考え、私はそれを図面に落とし込みました。

ご夫婦と一緒につくり上げた、大切な場所になりました。



図面だけでは完成しない住まいづくり

間取りが決まったあとも、住まいづくりは続きます。

ダイニングテーブルは、新居でも使い続けられるようメンテナンスを手配。

家具やカーテン、造作家具、姿見なども、ご夫婦と一緒に選んでいきました。
とても論理的なご主人が、家具選びでは、高価なベンチに一目惚れして即決されたことも。

住まいづくりは、理屈だけでは決められない。
そんな微笑ましい場面も、この家づくりの思い出です。

施工会社の手配から工事監理まで担当し、間取り変更に伴う消防署への確認など、安心して暮らしていただくための細かな調整も行いました。

新築マンションの完成、引き渡しと共にスムーズに工事着手できるよう
内覧会に合わせた工務店との現地調査や工事の手配を行い、
無事に工事が完了しました。



数か月後、もう一度おじゃましました

お引渡しから数か月後。

暮らしが落ち着いた頃、改めてご自宅を訪ねました。

そこにあったのは、「完成した家」ではなく、「ご夫婦らしい暮らし」。

以前から大切にされてきた家具も、新しく迎えた家具も自然に馴染み、ウォークスルークローゼットの押入れには、いつものように布団がしまわれていました。

ご主人様が一目ぼれしたベンチは娘さんご家族が集まった時にお孫さんが活用されているようです。

新しい住まいに合わせて暮らしを変えるのではなく、これまでの暮らしを、新しい住まいへ受け継ぐ。この住まいづくりを通して、改めてその大切さを教えていただいたように思います。

住まいは、お引渡しの日がゴールではありません。その家で過ごす日々の中で、その人らしい暮らしが育っていく。私は、そんな住まいづくりを、これからも大切にしていきたいと思っています。

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